ベンダーロックインとは?放置するとリスクも?原因や抜け出す方法、予防策を解説
目次[非表示]
- 1.ベンダーロックインとは何か
- 1.1.コーポレートロックイン
- 1.2.テクノロジーロックイン
- 2.公正取引委員会によるベンダーロックインに関する調査結果
- 3.ベンダーロックインに陥る原因
- 4.ベンダーロックインにより生じる問題点
- 4.1.改修コストが大きくなる
- 4.2.ベンダーにメリットのない要件・要望を拒否される
- 4.3.他社への移行が難しくなる
- 4.4.レガシーシステムの使用を継続しなければならないリスク
- 5.ベンダーロックインの状態から抜け出す方法4選
- 5.1.社内規定を見直す
- 5.2.べンダーと交渉し契約内容を変更してもらう
- 5.3.切り替え先のベンダーを選定する
- 5.4.専任のシステム管理者を社内に置く
- 6.アウトソース時にベンダーロックインを予防するには
- 7.まとめ
ベンダーロックインとは何か
ベンダーロックイン(英語:Vender Lock-in)とは、業務システムや情報システムなどの発注を特定のベンダーに過度に依存していることで、他のベンダーに乗り換えることが困難になってしまう状態のことです。
特にシステム開発・構築を行う際、特定のベンダーの技術・製品に依存してしまうと、ベンダーロックインに陥りやすくなります。
ここからは、ベンダーロックインの代表的な種類を2つ紹介します。
コーポレートロックイン
コーポレートロックインとは、特定のベンダーに過度に依存してしまい、その結果、他のベンダーへの選択肢が制限されてしまう状態のことです。
コーポレートロックインに陥る一つの原因として、自社の業務フロー、ルール、システムの詳細な仕様を最も深く理解しているのが、これまで取引を行ってきたベンダーであるという事情があります。
もし新たに別のベンダーに業務を委託する場合、その新たなベンダーは自社の業務やシステムについて新たに理解しなければならないため、多大な時間とコストが必要となります。これが、コーポレートロックインから抜け出すことが困難な理由の一つとなっています。
あるいは現在委託しているベンダーの規模が小さすぎて新しい案件を追加で任せられない、業務自体が特定個人に依存し属人化しているために、ブラックボックス化によって導入時の業務遂行のプロセスがわからず、新しく担当者が着任し、仕様を知らないなどの事態も考えられます。
テクノロジーロックイン
状態のことです。テクノロジーロックインに陥ると、その技術・製品・サービスを提供するベンダーから離れることが難しくなります。
例えば、特定のベンダーによって特有の設計理念やデータ管理方法をもとに開発されたソフトウェアパッケージを導入すると、そこからの移行が難しくなります。異なるベンダーの製品に移行しようとした場合、データの構造が移行先のシステムと合わないと、データの変換・移行が難しくなります。
公正取引委員会によるベンダーロックインに関する調査結果
令和4(2022)年、公正取引委員会は官公庁による情報システム調達におけるベンダーロックインに関する実態調査の結果を発表しました。
この調査結果によると、「これまでに情報システムの保守・改修・更改などの際に、現在利用している情報システムを取り扱うベンダーと再契約することになった事例がある」と回答した官公庁が98.9%に及んでいることがわかりました。
この再契約に至った経緯について、以下のような回答が報告されています。
● 既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため(48.3%)
● 既存システムの機能(技術)に係る権利が既存ベンダーに帰属していたため( 24.3%)
● 既存ベンダーしか既存システムに保存されているデータの内容を把握することができなかったため(21.1%)
● 既存システムに保存されているデータに係る権利が既存ベンダーに帰属していたため(7.1%)
※()は回答割合
上記の結果を見ると、テクノロジーロックインを理由に再契約を締結している官公庁が多いことがわかります。
参考:公正取引員会「(令和4年2月8日)官公庁における情報システム調達に関する実態調査について」
ベンダーロックインに陥る原因
本章では、企業がベンダーロックインに悩まされてしまう原因を3つの項目に分けて詳しく解説します。
ベンダー独自の技術・ソリューションを使用している
たとえば、特定のベンダーのソフトウェアを用いてデータを保存・管理している場合、そのソフトウェアに特化した形式でデータが保存されることが多々あります。その結果、他のソフトウェアでそのデータを読み込むことができない問題が発生することがあります。
また、企業が特定のベンダーが保有する特許取得済みの技術やプラットフォームを活用してビジネスを展開している場合、他のベンダーがその特許技術を使用することが法律的に認められていないため、取引を続けざるを得ません。
システムの特殊性や専門性が高まるほど、代替のベンダーを見つけることが困難になるのが一般的です。
システムの著作権をベンダーが保持している
特許とも共通しますが、システムの著作権をベンダーが保持している場合もベンダーロックインに陥りやすくなります。
システムの著作権を保有しているベンダーと契約すると、ベンダーがシステムの修正や改善を行う権利を独占しているため、システムを自由にカスタマイズしたり、更新・改良したりすることを制限される可能性があります。結果としてシステムに対する依存度が高まり、取引を止めることが難しくなるのです。
例えば、ソフトウェアをカスタマイズするためのソースコードをベンダーのみが知っている場合、そのソフトウェアに何らかの改良を加えるためには、必然的にそのベンダーとの契約を続けなければなりません。
仕様書や設計書が整備されていない
仕様書や設計書が整備されていない場合、そのシステムの開発・運用を担当しているベンダーのみがシステムの内部情報を詳細に把握している状態となります。
このような状況は、業務自体が特定個人に依存し属人化しているために、ブラックボックス化にも繋がり、新たなベンダーへの移行を試みる際には、システムの全体像を理解する時間とコストが大幅に増加します。
企業は特定のベンダーから離れることを躊躇し、結果としてベンダーロックインのリスクが高まる可能性があります。
ベンダーロックインにより生じる問題点
ここからは、ベンダーロックインにより生じる代表的な問題点について、詳しく解説します。
改修コストが大きくなる
ベンダーロックインが発生すると、特定のベンダーが自社システムについての詳細な情報を独占し、ブラックボックス化により他のベンダーがそのシステムを十分に理解することが困難になります。
ベンダーは「他の競争相手が存在しない状況で、唯一の解決策を提供している」という状況を利用して、改修やサポートの費用を高めることが可能となります。そのため、システムの改修等に伴い、大きなコスト負担を強いられる恐れがあります。
このような状況は企業の技術的な柔軟性を損ない、イノベーションを阻害する可能性もあります。
ベンダーにメリットのない要件・要望を拒否される
ベンダーロックイン状態にある企業はベンダーの製品やサービスに依存しているため、改善・変更を求める際にベンダーの意向に左右されやすくなります。
例えば、下記のような場合、ベンダーはその要求を先延ばしにする、あるいは全く無視することがあります。
● 企業からの要求がベンダーにとってメリットの少ないものでる
● ニーズに応えるために、大量のリソースを必要とする
● 最新技術の取り入れが求められる
その結果、企業のビジネスニーズや顧客の要求に迅速に応えにくくなり、ビジネス全体に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
他社への移行が難しくなる
コーポレートロックインの場合、新しいベンダーに自社のビジネスや業務内容を理解してもらうために、詳しく説明しなければなりません。新しいベンダーが元のベンダーと同じ理解度になるには、相当な時間が必要です。
また、業務自体が特定個人に依存し属人化しているために、ブラックボックス化によって導入時の業務遂行のプロセスがわからず、新しく担当者が着任し、仕様を知らないなどの事態の場合も同様に根気強い作業が必要になります。
またテクノロジーロックインの場合、データやアプリケーションの移行を円滑に進めるのが困難になります。移行計画の再検討や管理手法の改定が必要とされるためです。
いずれの場合も、移行に伴う手間・コストの増大や導入期間の延長といった問題が発生することから、他社への移行が困難になりがちです。
レガシーシステムの使用を継続しなければならないリスク
昨今はDXが進行し新しい技術が日々生まれていますが、ベンダーロックインに陥ってしまうと、古いシステムを使い続けるリスクが増大します。
ベンダーロックインから抜け出せずに旧式のシステムを使い続けることで、作業効率の低下や、システムのセキュリティが不十分になるなどの問題が生じる可能性があります。
■関連記事:
ベンダーロックインの状態から抜け出す方法4選
続いて、ベンダーロックインの状態から抜け出すうえで役立つ4つの手段をピックアップし、順番に解説します。
社内規定を見直す
自社の社内規定がベンダーロックインを引き起こしている可能性も無視できません。
たとえば、自社の規定作成をベンダーと同じグループのコンサルティング会社に一任してしまうと、その規定がベンダーに都合の良い形になってしまうことがあります。その結果、ベンダーロックインを招く可能性が出てきます。
規定の作成やチェックをベンダーとは無関係の第三者のコンサルティング会社に依頼することで、規定が公平・適正に管理されるようになるはずです。
特に、特定のベンダーの製品やサービスに依存するような規定がある場合、それを改定し、多様なベンダーから選べるようにすると良いでしょう。競争が促進され、より質の高いサービスを選択する機会が広がります。
べンダーと交渉し契約内容を変更してもらう
ベンダーとの間で締結している契約(例:随意契約期間、保守契約期間など)が原因で、ベンダーロックインに陥っていることもあります。
この場合はベンダーとの交渉が必要となりますが、重要なのがベンダーが契約を守っていない点を見つけることです。契約を解消したり、違約金を請求したりするための根拠を見つけることで、交渉を有利に進められます。
既存の契約を解除する代わりに新たな仕事を提案するなど、メリットとなる提案をあわせてしても効果的です。
切り替え先のベンダーを選定する
ベンダーロックインから抜け出すためには、別のベンダーへの移行が必要となります。その際は、技術力やコストだけでなく、移行作業(マイグレーション)を得意とするベンダーを選ぶことが大切です。
上記の要素を見極め、自社の要求に最も合うベンダーを選定しましょう。
専任のシステム管理者を社内に置く
新たなベンダーへの移行を進める作業には、一定の時間と手間が必要です。この作業を円滑に進めるためには、社内でシステム管理の責任を持つ担当者を任命することが重要です。
担当者を専任のシステム管理者として新たなベンダーとの仲介役を担わせたり、マイグレーションの全工程を監督させたりすることで、プロセスの一貫性の維持を図ります。これにより、自社のニーズに沿った形で移行作業を進めることが可能です。
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アウトソース時にベンダーロックインを予防するには
最後に、アウトソースの利用にあたって、ベンダーロックインの発生を未然に防止するための方法を解説します。
仕様書・設計書などのドキュメントの整備・最新化を行う
ベンダーが交代した際でも、新たなベンダーが迅速に業務を引き継げるようにするには、ドキュメントの整備と最新化が必要です。
ドキュメントの整備とは、システムの設定方法、データの管理と保管方法、問題発生時の対応手順など、日常業務を遂行するための詳細な手順書を作成することです。また、システムの変更やアップデートが行われるたびに、それに伴うドキュメントの更新を行うことも大切です。
そのためには、システム開発・更新時にベンダーから納品される納品物に、仕様書や設計書を含めることが重要です。ドキュメントの整備と最新化を怠らないように心掛けましょう。
ベンダーロックインを防ぎたいシステムの優先順位を決める
各部門が個別に管理されている企業においては、ベンダーロックインの存在なしには自社での運営が困難となるケースもあります。
ベンダーロックインは避けられない現象ではないため、リスクを理解した上で、適切に活用することが必要です。どの要素がロックインの対象となり、どの要素を避けるべきかを理解して管理することで、予期せぬベンダーロックインを防ぐようにしましょう。
まとめ
ベンダーロックインに対処するには、社内規定や契約内容の見直しなどが効果的です。マイグレーションを得意とするベンダーに切り替えると、ベンダーロックインを効率的に解消できます。ベンダーロックインの予防・脱却をお考えの方は、マイグレーションの実績が豊富な会社に相談することをおすすめします。
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