PoCとMVP開発の違いを4つの側面で解説!意味やメリット・成功させるための注意点とは
目次[非表示]
- 1.PoCとは新たなアイデアの実現可能性を検証すること
- 1.1.PoCを実施するメリット・目的
- 1.2.PoCと実証実験の違い
- 1.3.PoCの代表的な事例
- 2.MVP開発とは新規事業のポテンシャルを短期間・低コストで検証すること
- 2.1.MVP開発を採用するメリット・目的
- 2.2.MVP開発とアジャイル開発の違い
- 2.3.MVP開発の主な種類と活用ケース
- 3.PoCとMVP開発の違い4選を解説
- 4.DX推進にPoC・MVP開発が重要な理由は?PDCAプロセスに沿って解説
- 4.1.顧客目線に立った製品コンセプト設計のプロセス
- 4.2.仮説検証のプロセス
- 5.PoC・MVP開発を失敗させないための注意点
- 5.1.PoCにおける注意点
- 5.2.MVP開発における注意点
- 6.まとめ
PoCとは新たなアイデアの実現可能性を検証すること
PoCは「Proof of Concept」の略で、「概念実証」または「概念証明」とも訳されます。PoCは、新たなアイデアの実現可能性を証明するためのプロセスを指します。
新しいビジネスアイデアが浮かんだ際、それが課題解決に繋がる可能性があると考えるかもしれません。しかし、そのアイデアが実際に効果を発揮するかどうかは、具体的に試してみなければ分かりません。
実際に行ってみることで、予想外の問題が浮かび上がることもあります。そこで、アイデアが期待どおりの結果につながるのか確認するための手段として、PoCが用いられます。
PoCでは、単純に理論を考えたりデータを集めたりするだけではなく、サービスやシステムの試作品を実際に作り、それを使って検証を行います。この検証を通じて、自分の考えが正しいのか、実際に形になる可能性があるのかを見極めるのです。
これにより、アイデアの有効性をより確実に検証できます。その結果、自信を持ってプロジェクトを推進することができるでしょう。
PoCを実施するメリット・目的
ビジネスシーンでPoCを実施する主なメリット・目的について、下表にまとめました。
メリット・目的 |
解説 |
リスクの低減 |
具体的な製品・サービスを開発する前に簡易版を作ることで、リスク・コストを低減した状態で問題点を見つけられる。 |
成果の予測 |
PoCの過程で見つけた問題や改善点を反映し、製品が市場に投入された際にどれだけの顧客から受け入れられるかを予想できる。 |
工数削減 |
PoCを通じて製品やサービスの可能性を模索しつつ改善することで、不要な機能開発のリスクが減少し、結果として工数も削減できる。 |
周囲から理解を得る |
PoCによって得られた実現可能性の調査結果を数値やビジュアルで示すことで、客観的な証拠を提示し、関連部署や関係者の理解・納得を得やすくなる。 |
このように、PoCは製品やサービスの開発・商品化のプロセスをスムーズに進めるための有効なツールとなります。
PoCと実証実験の違い
PoCと実証実験は、しばしば同じ意味として使われることがあります。ただし、詳細に見ていくと、PoCと実証実験はそれぞれ異なる目的と意義があります。
PoCは、提案されたアイデアが現実的に実現可能かを探求する手段です。一方、実証実験は、具体的な製品やサービスが抱える問題点を明らかにする手段と定義されます。
PoCの過程で課題や問題点が明らかになることがあるため、混同されることがあるのです。
PoCの代表的な事例
PoCを活用している業界と、その代表的な活用事例を下表にまとめました。
業界 |
活用事例 |
IT |
システムの開発・導入、セキュリティの構築など |
医薬品 |
新薬の研究・開発など |
バイオテクノロジー研究 |
先端テクノロジーの研究開発など |
IT業界では、セキュリティを構築する際に「セキュリティ能力を実証可能か」「コンピュータのセキュリティシステムが正常に作動するか」といった観点でPoCが活用されています。
また、医薬品分野において、「健康体に薬の成分がどのように作用するか」「症状のある人にどれほどの量を投与すれば効果が表れるか」などを検証する際に、PoCが活用されることが多くあります。
さらに、バイオテクノロジーの研究でも、「研究の可能性を証明し、その研究への支持を獲得することで、予算獲得につなげる」という目的で、PoCが使用されることがあります。
MVP開発とは新規事業のポテンシャルを短期間・低コストで検証すること
MVP開発とは、新規事業の実現可能性を短期間かつ低コストで試す方法の一つです。MVPとは「Minimum Viable Product」の略称であり、顧客に必要最小限の価値を提供できるプロダクトを意味します。
MVP開発では、必要最小限のプロダクトを開発し、ユーザーによるフィードバックをもとに改善を繰り返すことで、プロダクトの価値の最大化を図ります。
MVP開発を採用するメリット・目的
さまざまな開発手法がある中で、MVP開発を採用する主なメリットと目的について、以下に要点をまとめました。
メリット・目的 |
解説 |
顧客が持つ本当のニーズの発見 |
ユーザーからのフィードバックに基づいて製品やサービスの改良を進めることで、ユーザーが本当に必要としているものが何かを迅速に理解できる。これにより、そのニーズに適合した製品やサービスを効率的に開発できるようになる。 |
最小限のコストで検証可能 |
最低限の機能を備えた製品を使って検証を行うため、開発と検証にかかる費用を最小限に抑えることが可能。 |
PDCAサイクルをスピーディーに回す |
開発初期の段階からPDCAサイクルを回せるため、修正や改良を迅速かつ正確に行える。 |
リリースまでの期間短縮 |
「必要最低限の機能を備えた製品を用いてテストを行い、フィードバックにもとづいて改良を重ねていく」という進行方法のため、通常の開発プロセスと比較して短い時間で製品開発を進められる。 |
MVP開発とアジャイル開発の違い
MVP開発とアジャイル開発は短期間で開発するという点では共通していますが、その他の特徴は大きく異なります。
アジャイル開発とは、プロジェクトをより小さなタスクに分割し、その各タスクに対して「計画、設計、実装、テスト」のサイクルを繰り返す手法です。
これに対して、MVP開発では、最小限の機能だけを持った製品を開発し、ユーザーからのフィードバックにもとづいて製品を順次改善していきます。
つまり、アジャイル開発は開発プロセスを重視し、MVP開発はユーザーの声を製品開発に反映させることを重視するという違いがあります。
MVP開発の実施にあたっては、アジャイル開発の手法を取り入れることも効果的です。特に小さなタスクごとにチームを編成し、それぞれが並行して作業を進める「スクラム方式」を用いると、作業の効率化を図りつつ、MVP開発をスムーズに進められます。
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MVP開発の主な種類と活用ケース
MVP開発は、大きく分けて以下の7つの種類があります。それぞれの特徴と実際の活用例について、以下の表で紹介します。
種類 |
特徴・活用ケース |
ランディングページ |
プロダクトが正式に完成していない段階で、プロダクトについて説明したページを制作する。 |
デモ動画 |
プロダクトを説明した動画を制作し、プロダクトの事前購入(サービスの事前登録)を促す。 |
プレオーダー |
プロダクトのローンチ前に登録・購入を募集する。 |
オズの魔法使い |
通常はシステムで担保する箇所について、人力・手動で代替えを行う。 |
コンシェルジュ |
供予定のプロダクトと同等の成果を手作業にて提供する。 |
プロトタイプMVP |
MVPの前段階に開発したプロトタイプを、そのままMVPとして用いる。別名、プロトタイピングとも呼ばれる。 |
競合ツール応用 |
既存ツールや、それをカスタマイズしたものを代用する。 |
PoCとMVP開発の違い4選を解説
PoCとMVP開発は、どちらもプロダクト開発の手法として利用されますが、主に以下の4点で違いが見られます。
PoC |
MVP開発 |
|
目的 |
新たなアイデアが現実的に実現可能かどうかを調査すること |
市場投入前に必要最低限の機能を持つ最初の製品を作り出すこと |
対象 |
新規のアイデア |
具体的な製品 |
方法 |
新たなアイデアが技術的・経済的に実現可能かを検証する |
市場のニーズに対応した最小限の機能の実装に重きを置く |
結果 |
アイデアの実現可能性が判明する |
市場での反応を受けて、プロダクトの改善を行えるようになる |
DX推進にPoC・MVP開発が重要な理由は?PDCAプロセスに沿って解説
企業がDXを進めていくうえで、PoCやMVP開発は極めて重要な手段となります。本章では、この理由をPDCAプロセスに沿って解説していきます。
顧客目線に立った製品コンセプト設計のプロセス
DX推進において大切なのは、新しい価値を顧客に提供することです。それを達成するためには、PoCの考え方をもとに、顧客を中心に据えたプロダクト・サービスの設計を行うことが大切だと考えられています。
たとえ革新的な技術や画期的なアイデアがあっても、それが顧客のニーズを満たさなければ市場での成功は難しいです。つまり、テクノロジーやアイデアが顧客のニーズとどのようにマッチし、どのような価値を生み出すかが、DXを進めるうえで重要なステップとなるでしょう。
仮説検証のプロセス
コンセプト設計を行ったら、MVP開発の手法を用いて必要最低限の機能だけを備えた製品を作成し、顧客からの反応を見ることになります。ここで得られる反応はさまざまで、好意的なものもあれば、不満な意見もあるでしょう。
重要なのは、フィードバックをもとに製品の改善や機能追加を行い、顧客のニーズに合わせて製品を改良していくことです。
顧客の声を反映する過程では、小さな修正のみで済むこともあれば、時には初めから設計を見直す必要が出てくることもあります。
初めから設計を見直す必要が出てくることもあります。コンセプトの設計から仮説検証までをPDCAサイクルとして繰り返し、プロダクトの完成を目指すことが大切です。
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PoC・MVP開発を失敗させないための注意点
最後に、PoC・MVP開発を失敗させないために把握しておくべき注意点をそれぞれ解説します。
PoCにおける注意点
PoCでは、できるだけ実際の運用環境に近い条件で検証を行うことが大切です。実際の運用環境に近い状況で検証を行わなければ、ユーザーの詳細な反応や意見を正確に得ることが難しいためです。
また、PoCではスモールスタートを心がけることも大切です。これにより、大きなコストをかけずに迅速に結果を確認して調整を行えます。
さらに、PDCAサイクルを素早く回すことも重要です。PoCを通じて、現状の問題点、解決策、アイデアなどを探り、PDCAサイクルを迅速に回すことで、新たな課題の発見や、検証の失敗などを経験しながらも、着実にプロダクト開発の成功を目指せます。
MVP開発における注意点
MVP開発でも、スモールスタートの徹底は重要です。あまりに多くの機能を詰め込んでしまっては、開発に時間・コストがかかりすぎ、本来の目的から逸れてしまう可能性があります。最も重要な機能から作り始め、徐々に改善・発展を進めていくことが大切です。
また、検証する顧客の性質の意識も大切です。MVPは新しい事物に対して敏感で影響力を持つ一群の人々、すなわち「アーリーアダプター」に対して提供するのが一般的です。
アーリーアダプターから良い反響を得られれば、そのプロダクトが大勢の人々にも受け入れられる可能性が高まります。そのため、アーリーアダプターからの反応を意識して、MVP開発を進めることが大切です。
まとめ
PoCとMVP開発は、いずれもプロダクト開発の手法ですが、目的・対象・方法・結果という4つの側面で違いが見られます。
DX化を進める際は、PoCとMVP開発の考え方を組み合わせて用いることが大切です。
企業がDXを推進していく際には、PoCやMVP開発を含む様々な開発手法を理解し、それらを活用することが求められます。実績のある専門の企業に相談することで、自社に最適なDX推進のアプローチを見つける手助けになるでしょう。
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