イテレーションとは?アジャイル開発を加速する継続的改善サイクル
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ソフトウェア開発業界では、アジャイル開発が主流となっています。その中心にあるのが「イテレーション」という概念です。イテレーションは、継続的な改善と迅速なフィードバックを通じて、より効果的な開発プロセスを実現するための手法です。
本記事では、イテレーションの基本的な定義から、その開発サイクルにおける役割、アジャイル開発との関連性、さらにはスプリントやスクラム、ウォーターフォールモデルとの比較まで、イテレーションの全容について詳しく掘り下げていきます。これにより、イテレーションを効果的に活用し、プロジェクトの成功を目指します。
イテレーションとは?
イテレーションは、アジャイル開発の核心を成す概念です。この手法は、短い開発サイクルを繰り返し行い、製品の継続的な改善を目指します。各イテレーションでは、開発チームは具体的な目標を設定し、実装からテスト、レビューまでを行います。このプロセスは、製品が市場に出る前に、顧客のフィードバックを組み込みながら改善を重ねることを可能にします。こうした反復的かつ進化的なアプローチは、変化に対応しやすく、顧客の要求に柔軟に対応する製品を生み出すことにつながります。イテレーションは、単に技術的な進展だけでなく、チームの協働と学習を促進することにも大きな意義があります。
イテレーションの基本概念と開発における意義
イテレーションはアジャイル開発における重要な概念で、一連の工程を短期間で繰り返す開発サイクルを指します。通常、1~4週間の期間で設定され、この期間内にスプリントバックログにリストされたタスクを完了することを目標とします。イテレーションでは、要件定義、設計、実装、テストなどの一連の工程が含まれ、この反復的なプロセスにより、問題を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。
アジャイル開発におけるイテレーションの使用は、継続的に成果物をリリースすることを可能にし、ソフトウェア開発の単位として機能します。このアプローチにより、製品の品質向上や市場への迅速な適応が促進されます。また、チームは短いスパンで開発手法を見直し、製品を改善する機会を持つことができるため、効率的かつ柔軟な開発プロセスを実現できます。
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イテレーションの開発サイクルにおけるその役割とは
イテレーションの重要な役割は、短いスパンで開発手法を見直し、問題を早期に発見し改善することです。また、アジャイル開発はウォーターフォール開発の弱点を克服する手法として広く認知されており、イテレーションを採用することでその効果を高めることができます。イテレーションの期間は短く、開発項目を分けて優先順位の高いものから進める手法が取られるため、1つのプロジェクト内に複数存在するのが一般的です。
イテレーションの計画と実行の基本フレームワーク
イテレーションの計画と実行には、主に3つのステップがあります。
ステップ |
内容 |
①リリース計画の作成 |
顧客の要望を整理し、イテレーションごとに要件と仕様を決定。リリース計画を作成する。開発途中での変更が可能なように、必要最小限の要件と仕様を定める。 |
②開発 |
リリース計画に基づいて開発を進める。前回のイテレーションでの問題点や反省点を踏まえて、適宜変更を加える。 |
③各イテレーションごとに成果物をリリース |
完成した成果物をリリースし、仕様通りに動作するか、顧客の要望との差異を確認。不足部分は改善し、次のイテレーションに活かす。 |
不足部分については改善を行い、次のイテレーションに活かします。このフレームワークは、イテレーションの効率的な進行と、製品の品質向上に貢献します。
アジャイル開発とイテレーションの違い
アジャイル開発とイテレーションは密接に関連していますが、それぞれ異なる概念です。アジャイル開発は、短サイクルでの反復的な開発プロセスを特徴とし、ソフトウェアやアプリケーション開発の要求などを決定する際に広く採用されます。アジャイル開発では厳密な仕様設計を最初に行わず、大まかな仕様や要求をまとめ、開発着手後の仕様変更に柔軟に対応できるようにします。これはウォーターフォール開発との大きな違いであり、アジャイル開発では開発途中での仕様変更を想定に入れて工程を進めます。
アジャイル開発におけるイテレーションの役割
一方で、イテレーションはアジャイル開発における一種の流れとして活用され、サイクルを繰り返しながら開発を進める方法を指します。アジャイル開発では、機能ごとの小単位で開発を繰り返し、開発終了した機能から順次顧客へ提供することが可能です。これもウォーターフォール開発との顕著な違いで、アジャイル開発の柔軟性を反映しています。
このように、アジャイル開発は広範な開発アプローチの一つであり、イテレーションはその中の具体的な実施方法です。アジャイル開発を理解するためには、イテレーションの役割や進め方を把握することが重要です。
スプリントとイテレーションの違い
スプリントとイテレーションは、アジャイル開発における重要な工程ですが、それぞれ異なるコンテキストで使用されます。
スプリントを取り入れたイテレーションの計画方法
スプリントは、アジャイル開発の代表的なフレームワークである「スクラム」における工程の反復単位です。通常、1〜4週間程度の期間に設定され、この期間中にシステムに必要な機能の設計、開発、テストまでを行います。スプリントは短期間で成果を出すことに重点が置かれ、特定の目標を設定して設計・開発・テストなどの工程を繰り返します。
スプリントを取り入れたイテレーションの計画方法には、主に3つのステップがあります。
ステップ |
内容 |
1.イテレーション計画の作成 |
イテレーションごとに要件と仕様の大枠を決定し、リリース計画を作成。開発途中での改善や変更が可能な状態に保つ。顧客と開発チーム間の密なコミュニケーションが重要。 |
2.顧客と技術者の協働による開発 |
顧客チームと開発チームが協力して開発を進める。顧客から提示された目標に基づいて開発チームが作業見積もりを行い、目標に合わせて開発を進める。 |
3.各イテレーションごとに成果物をリリース |
各イテレーション終了時に成果物をリリースし、顧客の要望との差異を確認。不足部分は改善し、次のイテレーションに活かす。 |
この計画方法は、顧客の要望に迅速かつ効果的に対応することを目的としています。重要なのは、顧客との連携とフィードバックを基にした柔軟な開発アプローチです。
スプリントとイテレーションを区別するポイント
一方、イテレーションは「反復」や「繰り返し」という意味を持ち、短期間で反復して行う開発期間を指します。イテレーションはXP(エクストリーム・プログラミング)という開発手法で使用され、コミュニケーション、シンプルさ、フィードバック、勇気、尊重といった価値観を重要視しています。短期間で多数の工程を繰り返し、開発記録を集めることが特徴です。イテレーションは、アジャイル開発全体では一般的に使用され、スクラムではスプリントと呼ばれることが比較的多いです。
要するに、スプリントとイテレーションは同様の反復的な開発サイクルを指しますが、スプリントはスクラム開発に特化しており、イテレーションはアジャイル開発全般に広く適用される概念です。また、イテレーションはXPなどの他のアジャイル手法でも使用されるため、スプリントとは使用されるフレームワークや手法において違いがあります。
スクラム、ウォーターフォールとイテレーションの関連性
スクラム、ウォーターフォール、およびイテレーションは、ソフトウェア開発の異なるアプローチを表しています。
手法 |
説明 |
特徴 |
ウォーターフォール開発 |
線形な進行で各段階を一つずつ完了する方法 |
予測可能性と透明性に重点 |
アジャイル開発 |
柔軟性を持った開発プロセスで、変更や新しい要求に迅速に対応 |
短い反復(イテレーション)で開発を進め、頻繁にフィードバックを取り込む |
スクラム開発 |
アジャイルの一手法として、短いスプリントを中心にチームでの協力を重視 |
定期的なスプリント(通常1〜4週間)で成果を出し、チームで進捗共有とレビュー |
これらの手法はソフトウェア開発におけるプロセスの進め方や開発チームの働き方に影響を与え、それぞれ異なる特性と利点を持っています。ウォーターフォールは予測可能性と透明性に重点を置きながら、アジャイルとスクラムは柔軟性と速いフィードバックサイクルを重視しています。
スクラム開発フレームワークにおけるイテレーションの活用
スクラム開発フレームワークは、ソフトウェア開発手法の一種で、チームと共同で迅速な開発を行うフレームワークです。この中で、イテレーションは重要な役割を担います。イテレーションは、短期間で繰り返される開発サイクルのことを指し、アジャイル開発の概念として知られています。設計、開発、テスト、改善のサイクルを短期間で繰り返すことにより、問題の発見や改善が容易になります。スクラム開発では、イテレーション毎にソフトウェアや製品の動作や進行状況をチェックするのが基本で、チームとのコミュニケーションを取りながらリリースに向けて開発を進めることが重要です。
イテレーション計画の作成では、要件と仕様の大枠を決め、リリース計画を作成します。開発途中での改善や変更が可能なよう、必要最小限の要件と仕様だけを決めることがポイントです。顧客と開発チームのコミュニケーションが重要で、顧客からの要望を基に、開発チームが目標を設定し、顧客と協力しながら開発を進めます。イテレーション終了後は、目標の達成度を確認し、次のイテレーションに活かします。
このように、スクラム開発フレームワークにおけるイテレーションの活用は、短期間での反復的なサイクルを通じて、効率的かつ柔軟な開発を促進します。開発プロジェクトの進行において、チームのコラボレーションを向上させると同時に、顧客の要望に柔軟に応えることが可能になります。
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ウォーターフォールモデルとイテレーションの組み合わせ方
ウォーターフォールモデルとイテレーションを組み合わせるアプローチは、ソフトウェア開発において、アジャイルとウォーターフォールの両方の長所を取り入れたハイブリッド手法です。Erick Bergmann氏とAndy Hamilton氏によって定義されたこのモデルでは、ソフトウェア開発チームはアジャイル手法を使用し、ハードウェア開発チームや製品マネージャーはウォーターフォール手法を採用します。このハイブリッドアプローチは、チーム間のコラボレーションを活発にし、アジャイルへの移行を段階的に行いながら、プロジェクトの予算や納期の制約を考慮して進行する場合に適しています。
ウォーターフォールモデルの計画性と具体性、そしてアジャイル手法の適応性と柔軟性を組み合わせることで、プロジェクトの運営が効果的になります。例えば、企業レベルではアジャイル手法を使用し、要件や設計段階ではウォーターフォールモデルを採用するなど、プロジェクトや組織のニーズに応じて手法を選択することが可能です。このように、ウォーターフォールモデルとイテレーションを組み合わせることは、プロジェクトの性質と要求に応じて、柔軟かつ効率的な開発手法を提供します。
イテレーションの目的、メリット
イテレーションは、開発サイクルを短期間で繰り返すプロセスであり、アジャイル開発の重要な概念です。このプロセスにより、設計、開発、テスト、改善のサイクルを迅速に行うことがメリットとなり、問題の早期発見と改善が容易になります。
イテレーションを通じた開発プロセスの改善点
イテレーションの計画段階では、要件と仕様の大枠を決め、リリース計画を作成します。開発途中での改善や変更が可能なよう、必要最小限の要件と仕様の設定が重要です。また、顧客と開発チーム間の密なコミュニケーションを通じて、技術やビジネスの観点から顧客の要望を満たすことが求められます。実際の開発では、顧客と開発チームが協力して目標を設定し、進捗を確認しながら開発を進めます。イテレーションの終了後には、達成した目標を評価し、次のイテレーションに活かします。
このようにイテレーションを適切に管理することで、開発プロセスはより効率的かつ柔軟になり、顧客の要望に応じた製品やサービスを提供することが可能になります。
イテレーションの実施方法・流れ
イテレーションの実施には、明確な計画と段階的なプロセスが必要です。以下は、イテレーションを効果的に進めるための具体的なステップです。
ステップ |
説明 |
①イテレーション計画の策定 |
プロジェクト全体の大枠と各イテレーションのリリース計画を立て、必要な要件のみを決定。顧客との密なコミュニケーションを重視。 |
②顧客と協働しながら開発に着手 |
計画に基づき開発を開始。目標設定、開発作業の進行、テスト実施。顧客からの意見やアドバイスを積極的に取り入れる。 |
③各イテレーションの成果物をリリース |
開発完了後、イテレーションごとに成果物をリリース。顧客からのフィードバックを受け、目標やニーズとの差異を改善する。 |
イテレーションは、顧客の要望と開発チームの作業を連携させ、反復的なプロセスを通じて製品やサービスを改善していく方法です。適切な計画と顧客との協働、継続的なフィードバックの活用が、効果的なイテレーションの実施には不可欠です。
実践的なイテレーションの進め方とチェックポイント
イテレーションを実践的に進める際の主要なチェックポイントは下記が考えられます。
チェックポイント |
詳細 |
プロジェクトに適した期間の設定 |
イテレーションの期間はプロジェクトの要求や作業ボリュームに応じて慎重に設定 |
開発ペースの維持 |
開発量をイテレーションごとに均等に配分し、安定した開発ペースを維持 |
開発チーム内の定期的な振り返り |
進行中の問題点や改善策を特定し、次のイテレーションでの対応を計画 |
作業の自動化 |
繰り返しになる作業を自動化し、開発プロセスの効率向上とチームの負担軽減を図る |
イテレーションを成功させるコツ
ここまでイテレーションについて網羅的に解説してきました。イテレーションは組織における開発体制において検討に値する手法です。最後に効果的にイテレーションを活用するためのヒントを再掲します。
イテレーション成功のためのチームマネジメント戦略
イテレーションを成功させるためには、前述した重要なヒントを考慮することが効果的です。
- 明確な目標設定
イテレーションの成功のためには、具体的かつ明確な目標を設定することが重要です。この目標は、チーム全体で共有され、各メンバーが理解し、取り組むべき内容を明確にします。
- 開発ペースの維持
一定の開発ペースを維持することで、チームの負担を軽減し、開発工程の効率を高めることができます。
- 定期的な振り返り
各イテレーションの終わりには、チームで振り返りを行い、改善点や次のステップに活かすことが重要です。このプロセスを通じて、開発効率が上がり、より高品質な成果物が生み出されます。
- 作業の自動化
可能な限り、繰り返し行う作業を自動化することで、開発チームの負担を軽減し、生産性を向上させることができます。
これらのヒントを適用することで、イテレーションを効果的に運用し、アジャイル開発におけるそのメリットを最大限に引き出すことが可能です。
オフショア開発会社のリソースをうまく活用する
日本国内で優秀なエンジニアを確保するのは時間や投資コストの面などでハードルが高いのも事実であり、システム開発、さらにはその先のDXで課題を抱えている企業のすべてに適用できるアプローチではありません。
このため、弊社コウェルをはじめ、ベトナムで多数エンジニアを抱えるオフショア開発会社をうまく使い分けながら、テストや開発を進めていく方法も有効な選択肢のひとつです。
実際にどのように開発を進めていくのかについては大きく分けて2パターンが存在します。ひとつは、仕様書をもとにオフショア開発会社が決められた期間までに所定の成果物を完成させる「受託開発型」、もう一つはオフショア開発会社に在籍するエンジニアの中から、指定のメンバーを「専属チーム」として組成し、各メンバーのスキルや経験に応じて決められた人月単価(月額料金)が発生する「ラボ型」です。
オフショア開発会社と組んで海外で開発を進める場合、仕様書などの要件定義はもちろんこと、異なる言語や文化に起因するコミュニケーションギャップが生じるのは避けて通れない課題と言えます。このため、自社のパートナーとして適切な開発会社を選定する上では、それらのコミュニケーションギャップをいかに埋めながら、プロジェクトを推進していくことができるかどうかを見極める視点が欠かせません。
コウェルでは日本語能力の高いベトナム人エンジニアがテストや開発に従事する体制を基本としています。加えて、日本のお客様とテスト・開発の現場をつなぐ役目を果たす日本人ブリッジSEも多数在籍しており、日本人とベトナム人のエンジニアが協力しながらプロジェクトを管理、運営することでコミュニケーションを円滑にし、高い品質を実現できる体制を構築しています。
なお、コウェルに関する詳細資料は以下でダウンロードすることが可能です。
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