最新)オフショア開発のメリット・デメリットと注意点まとめ
目次[非表示]
- 1.オフショア開発のメリットとは?
- 1.1.優秀なIT人材・専属的な開発チームを確保できる
- 1.2.品質維持をしながらコストを削減しやすい
- 1.3.ラボ開発を選択しやすい
- 2.オフショア開発のデメリット
- 3.オフショア開発の現状・問題点
- 3.1.オフショア開発における課題・リスクとは?
- 3.1.1.コミュニケーションコストが生じる
- 3.1.2.プロジェクト体制・規模によってはコストメリットなし?
- 3.1.3.品質管理・進捗管理などの管理コストも
- 4.オフショア開発を最大限活用する成功ポイント
- 4.1.オフショア開発での理解不足・認識ギャップの解消策
- 4.1.1.要件定義・準備を綿密に行う
- 4.1.2.ローコンテクストなコミュニケーションを意識
- 4.1.3.共有資料のインスペクション
- 4.2.オフショアに不安がある方は、まずは気軽に無料相談
- 4.2.1.発注先に適切な企業を選ぶ
- 4.2.2.国民性・文化の近い委託先や国を選ぶ
- 5.オフショア開発についてのよくある質問
- 6.まとめ:オフショア開発は、ますます現実的な選択肢に
オフショア開発の最大のメリットは、海外に業務を委託することで、コスト削減とリソース確保を同時に実現できる点にあります。国内の高度IT人材の確保が困難さを増す中で、システム開発の外部委託先を検討中の企業IT担当者であれば、オフショア開発も選択肢のひとつとして関心をお持ちではないでしょうか?
しかし、一方でオフショア開発には「海外を拠点にしているのでコミュニケーションを取りづらい」「要件定義など細かい指示が伝わりにくい」「進捗の確認などに時間がかかる」といったネガティブな評価もついて回ります。
これらのデメリットを解消し、オフショア開発のメリットを最大限に享受するためのポイントは何でしょうか? ベトナムのハノイとダナンに拠点をもち、長年にわたりオフショア開発の導入を支援してきたコウェルだからこそ話せる「オフショア開発のメリット・デメリット」のリアルと、導入する際のポイントをご紹介します。
オフショア開発のメリットとは?
まず、オフショア開発にはどのようなメリットがあるでしょうか。一般的には、次の3点が挙げられます。
優秀なIT人材・専属的な開発チームを確保できる
オフショア開発の最大のメリットは、何といっても国内で不足感の高まるIT人材を国外で確保できる点にあります。
ベトナムをはじめとするアジア諸国では、国策として高度IT人材の育成に力を入れている国が多くあります。特にベトナムは国の方針として『IT国家戦略』を掲げ、国を挙げてIT人材の育成に注力しています。「TopDev」(英語、2021年)のレポートによると、ベトナムのIT人材人口は今年2021年には90万人以上に達しており、増加傾向にあります。
ベトナムのIT市場動向をまとめた『VIETNAM IT MARKET REPORT 2020』によると、エンジニアの間ではJavascript、Java、PHP、Pythonなどが主要なプログラミング言語として利用されています。
プログラミング言語 |
主な特徴 |
---|---|
Javascript |
・ブラウザ上でWebページを動かすためのスクリプト言語 ・動的なコンテンツの更新、マルチメディア管理などが可能 |
Java |
・マルチプラットフォームな言語で汎用性が高い Webサービスから業務系システム、組み込み開発、スマホアプリまで多岐にわたり採用されている |
PHP |
・動的なコンテンツの作成に適したプログラミング言語 ・HTMLと組み合わせて使用できる |
Python |
・近年、注目を集めているプログラミング言語 ・AI(機械学習・ディープラーニング)開発やビッグデータ解析などの最先端分野の開発にも用いられる |
また、近年ではAI・ブロックチェーン・IoTといった先端テクノロジーにも対応できる人材を揃えたオフショア開発企業が増えています。現地の若いエンジニアにも、国内トップクラスの高い給与を得られることから、これらの実績やスキルを身につけることに対する強いモチベーションがあります。
以前はオフショア開発というとコスト削減のメリットのみが注目されていましたが、このように高度な開発案件にも応えられる技術の高さや人材の豊富さに着目して、オフショア開発を選択する企業が増えています。
品質維持をしながらコストを削減しやすい
オフショア開発の主な拠点となっているのは、中国、インド、ベトナム、フィリピン、バングラディシュなどのアジア諸国が中心です。高い品質要求にも応えられる開発体制を確保しながら、日本国内に比べて人件費などのコストを削減できるのもオフショア開発の大きなメリットです。
「オフショア開発.com」によると、2021年時点のベトナムにおけるオフショア開発の人月単価相場は、プログラマー36.58万円、シニアエンジニア42.93万円、ブリッジエンジニア48.64万円となっています。単価はやや上昇傾向にあるものの、国内相場と比較して依然として大きな優位性があることがわかります。
ラボ開発を選択しやすい
ラボ型開発とは、オフショア開発の形態の一種で、発注企業の専任開発チームをオフショア先で編成し、月額費用固定で開発するものです。発注企業側は、開発会社のプロジェクトマネージャーやブリッジSE(橋渡し役のエンジニア)とのやり取りを通して、開発の指示をしていきます。オフショア開発においては、このラボ型開発を柔軟に選択できるのも魅力の一つです。
ラボ型開発のメリットは、半年から1年単位のまとまった期間でエンジニアチームを確保できる点にあります。契約期間内であればエンジニアチームに継続的に業務を発注することができ、案件ごとにプロジェクトを編成し直す必要がありません。また、一つのチームに継続的に発注できるので、チームにノウハウが蓄積しやすく、円滑なコミュニケーションが図られやすいメリットがあります。
ラボ型開発案件にウォーターフォール・モデルを用いられることがありますが、多くの場合には、アジャイル・モデルで実施します。
ラボ型開発では「企画→設計→実装→テスト」の短期のサイクルで開発→フィードバックを積み重ね、仕様や要件をブラッシュアップしながら開発を行う「アジャイル・モデル」に適しています。
オフショア開発のデメリット
オフショア開発には人件費を抑えながら高度なIT人材を確保し、柔軟に開発を委託できる大きなメリットがあります。しかし、一方で次のようなデメリットが伴います。
言語の壁によるコミュニケーションロスが発生する
オフショア開発は、海外のチームと開発プロジェクトを進めるスタイルのため、言語の壁によるコミュニケーションロスの問題はどうしても伴います。
日本のコミュニケーションの特徴は、言語以外の価値観や感覚といったコンテクスト(文脈、背景)に依存する「ハイコンテクスト文化」と呼ばれます。「行間を読む」「空気を読む」というのも、日本ならではのハイコンテクスト文化の特徴です。
対して、他のアジア諸国は言語表現に重きを置く「ローコンテクスト文化」が中心で、受け手は言語で表現された内容を文字どおりに受け取る特徴があります。単なる言語の違いだけでなく、こういったコミュニケーション文化の違いも、コミュニケーションロスを招く要因となります。
時差や文化の違いによる進捗管理がしにくい
言語の壁だけではなく、海外との時差が発生することでプロジェクトの進捗管理がしにくいことと、文化の違いから品質基準・レベルに対するとらえ方のギャップが生じるリスクがあります。その結果、発注企業側が求めた品質基準が満たされないという事態が生じやすくなります。
小規模案件ではコスト削減がしにくい
オフショア開発では、こういったコミュニケーションロスの問題を防ぐために、日本の発注企業側と現地の開発チームの間に日本語が堪能なプロジェクトマネージャー(PM)やブリッジSEをアサインします。場合によってはコミュニケーター(通訳)をつけることもあります。国内開発に比べてこれらの人件費が上乗せされるので、小規模の開発案件などではオフショア開発のコストメリットが相殺されてしまう懸念があります。
また、一定期間エンジニアチームと契約するラボ型開発のスタイルをとる場合、月額費用固定での契約となるため、発注する開発件数が少ないとかえって費用対効果が低減するおそれがあります。
オフショア開発の現状・問題点
ここまで見てきたとおり、オフショア開発には海外とのコミュニケーションや文化の違い、物理的な距離などに伴うデメリットが存在します。これらのデメリットによって、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。
オフショア開発における課題・リスクとは?
オフショア開発における課題やリスクとしては、大きく次の3点が考えられます。
コミュニケーションコストが生じる
オフショア開発においては、仕様や設計に関する細かい指示が伝わらないコミュニケーションロスが発生しやすく、要求した成果品が得られないリスクがあります。そのリスクを解消するためにPMやブリッジSEなどを配置する、コミュニケーションコストが発生します。
加えて、コミュニケーションロスのために開発期間が遅延することもコストとして見込んでおく必要があります。
プロジェクト体制・規模によってはコストメリットなし?
開発プロジェクトの体制や規模が一定程度なければ、上述のようなコミュニケーションコストによって、せっかくのオフショア開発のコストメリットが発揮されにくくなります。また、ラボ型開発の場合は一定量の開発件数を確保しなければコストメリットが薄れてしまいます。
品質管理・進捗管理などの管理コストも
さらに、オフショア開発では開発プロジェクトを遠隔で進行することになりますが、発注企業側が直接現地に行って開発企業側とコミュニケーションを図る機会は限定されることから、コミュニケーションの齟齬が起きやすくなります。また、時差もあることから国内開発のように日中に気軽にコミュニケーションを取れる環境にありません。そのため、品質管理や進捗管理などの管理コストや、プロジェクトの遅延リスクをある程度見込んでおく必要があります。
具体的には、各オフショア開発会社では、次の項目について開発標準・品質管理の基準を定めています。会社によって、品質管理にどれだけ力を入れ、コストをかけているかは異なります。
<開発標準・品質管理基準 (例)>
- 開発手順
- レビュー方式
- 品質管理プロセス、管理基準
- 翻訳・通訳の有無、(いる場合は)翻訳の品質を保つプロセス
- プロジェクトの体制(特定の人材に依存する属人的な体制になっていないか) など
▼オフショア開発が抱える課題は、こちらを参考にしてみてください。
→オフショア開発が抱える課題とは?取り組むべき問題点と7つの解決策
オフショア開発を最大限活用する成功ポイント
オフショア開発の品質を左右するリスク要因は、現地の開発エンジニアの技術力・開発力以上に、日本の発注企業側と開発企業側の間における言語や文化などの違いから生じるコミュニケーションロスにあるともいえます。したがって、いかにそのコミュニケーションロスを未然に防ぎ、開発要件や仕様に対する理解不足や認識のギャップを最小化できるかが、オフショア開発を成功に導く最大のポイントといえます。
オフショア開発での理解不足・認識ギャップの解消策
では、その認識のギャップを最小化するにはどんなポイントがあるでしょうか? ここでは、具体的な防止策を3点ご紹介します。
要件定義・準備を綿密に行う
開発要件の定義は、プロジェクトにおける最初の出発点となります。したがって、この上流工程の段階で、開発要件の定義や仕様に対する多義的な解釈が生じないよう、曖昧な表現を避けて要件を細かく記述するなどの工夫が求められます。
弊社コウェルでは、ヒアリングや要件定義を日本人PMとブリッジSEが連携しながら担当し、綿密な準備を行った上で、詳細設計やソフトウェア開発をハノイやダナンの開発チームにバトンバスをする体制をとっています。そのため、よく起こりがちな初動での認識の相違や要件定義が曖昧なまま開発が進むということはなく、安心して開発を任せていただくことができます。
ローコンテクストなコミュニケーションを意識
調整役となるPMやブリッジSEはもちろん、開発チームの中にも日本語に精通した人材がいるかどうかが、プロジェクトの成否を決める大きな要因となります。
ただし、日本語検定など形式的な日本語スキルを備えているからといって、前述した「ハイコンテクスト文化」まで熟知しているとは限りません。したがって、普段の開発企業側とのコミュニケーション(チャット、メールなど)においては「言葉にしていないものは理解されない」「言葉にしたことがそのまま受け取られる」という前提で、ローコンテクストなコミュニケーションを心がけましょう。
共有資料のインスペクション
インスペクションとは、作成されたマニュアル等のドキュメントに対して、第三者である専門家(インスペクター)がチェックするプロセスです。実装に入る前の上流工程の段階で、内容面の矛盾や要件定義の曖昧さなどをインスペクターに指摘・修正してもらうことで、後々のコミュニケーショントラブルを回避し、開発に伴うトラブルを防ぐことができます。また、双方の認識が深まることで開発スピードの向上も図ることができます。
▶︎さらに詳しい『オフショア開発の失敗例から学ぶ成功するための8つのポイント』
オフショアに不安がある方は、まずは気軽に無料相談
オフショア開発を成功させるための、コミュニケーションロスを回避するポイントについてお話ししてきました。それでも、初めてオフショア開発を検討する際には不安はどうしても伴うと思います。そこで、まずはオフショア開発企業が設けている無料相談を受けてみることをお勧めします。
発注先に適切な企業を選ぶ
開発プロジェクト初動での致命的なミスを避ける観点から、ヒアリングや要件定義の上流工程の部分にこそ、開発会社の実績と経験が現れます。窓口は日本人PMが行う、あるいは日本語のコミュニケーションが堪能で開発意図を正確に伝えてくれるブリッジSEの存在が「失敗しないオフショア開発」の大きなポイントです。初回の顔合わせなどの段階でどんなブリッジSEがいるか、開発チームにはどんなメンバーがいるのか、不安点や気になることはどんどん質問してみることです。また、自社の開発案件に近い開発実績があるのかどうかもチェックしましょう。
国民性・文化の近い委託先や国を選ぶ
国ごとに国民性などの特徴は異なるので、それらの特徴を理解した上で、自社の開発案件に適した国を選択することもポイントのひとつです。その点で、東南アジア・南アジア各国は概して勤勉で真面目な国民性を有し、国交的にも非常に親日なので、委託先として適しています。
特に、オフショア開発先として人気のあるベトナムは、「海外日本語教育機関調査」によると、国内の日本語学習者は2015年から2018年までの間に169.1%増と急増しており(17万4,521人)、日本語教育に非常に力を入れています。こうした日本語を話す人材の拡大を受け、日本語能力が高いベトナム人エンジニアの層も次第に厚くなっています。実際、コウェルでは日本語能力試験の資格でいえば、最高レベルのN1、または大学入学レベルに相当するN2〜N3以上を保有する社員がベトナム人社員全体の半数を占めています。日本語学習人口の層が厚くなっているベトナムでは、日本語ができるエンジニアを採用できる可能性が他国と比べて高いともいえます。
▼オフショア開発成功のポイントは、こちらを参考にしてみてください。
→オフショア開発の失敗例から学ぶ成功するための8つのポイント
オフショア開発についてのよくある質問
最後に、オフショア開発についてよく聞かれるQ&Aをご紹介します。
オフショア開発ってどんな開発?
「オフショア開発(Offshore Development)」とは、Webシステムやアプリケーション、業務システム、などIT分野の開発業務を、海外の開発企業や海外子会社に委託する開発手法のことです。
オフショア開発の委託先の国は、以前は中国が主流でしたが、人件費の高騰などに伴い、現在はベトナムをはじめ東南アジア・南アジア諸国が大半を占めています。「オフショア開発白書2021年版」(オフショア開発.com)によると、オフショア開発委託先の国別ランキングは、1位:ベトナム(52%)、2位:フィリピン(12%)、3位:インド(10%)、4位:バングラディシュ(9%)、5位:ミャンマー(9%)となっており、ベトナムが圧倒的な実績を誇っています。
▶︎最新のオフショア開発動向について知りたい方はこちら
→【2022年最新版】IT業界のオフショア開発とは
オフショア開発ってどういう企業が採用するの?
以前はオフショア開発を採用する企業といえばIT業界が大半でしたが、今日では一般企業にも広く普及しており、また、企業規模もさまざまで、大企業だけでなく10名以下のスタートアップなども積極的に採用しています。弊社が支援した導入実績をみても商社、小売業、外食チェーン、物流、医療・介護、ヘルスケア……と、実に多種多様な業種においてオフショア開発が活用されています。
▶︎弊社のお取引事例はこちらも参考にしてみてください。
→取引事例|オフショア開発を高品質・低コストで実現
オフショア開発に向いているシステム開発の案件とは?
オフショア開発を担うアジア諸国は高度IT人材の育成に力を入れており、オフショア開発を任せられる技術範囲は広がっています。「オフショア開発白書2021年版」によると、「オフショア開発.com」に相談が寄せられた開発内容の上位はWEBシステム/サービス(27%)、スマホアプリ開発(27%)、WEBシステム/業務(16%)、サイト制作(13%)と続きます。また、少数ながらAI開発、IoT開発、ブロックチェーンといった先端テクノロジーの開発案件も増加傾向にあります。
その一方で、デザインの要素が大きいUI/UXの分野は、細かいニュアンスを伝えにくいことから、一般的にオフショア開発の苦手とする分野といわれています。デザインを国内、コーディングを海外、と開発工程を分ける事例が多いようです。
まとめ:オフショア開発は、ますます現実的な選択肢に
オフショア開発を始めて検討する企業IT担当者向けに、オフショア開発のメリット・デメリットについて説明しました。DXの流れを受けて、各企業においてデジタル技術による業務革新が喫緊の課題となる中で、人件費を抑えながら高品質な開発チームを確保できるオフショア開発はますます現実的な選択肢になりつつあります。オフショア開発の導入支援を行う企業の規模や業種も多岐にわたるので、いま検討中の開発案件に適したオフショア開発企業があるはずです。
まずは、気軽に無料相談を受けてみることをお勧めします。
本記事がベトナムにおけるオフショア開発を検討される上で少しでも参考になれば幸いです。
私たちコウェルは品質を重視したオフショア開発、オフショアにおけるテストサービス、品質保証に取り組んでいます。オフショア開発・オフショアでのソフトウェアテストに関してお悩みなどございましたら、ぜひコウェルにお気軽にお問い合わせください。
貴社のオフショア開発プロジェクトを最大限にサポートさせていただきます。
なお、コウェルに関する詳細資料は以下でダウンロードすることが可能ですので、何かございましたらお気軽にお問い合わせください。
このほか、弊社の具体的なサービスや導入事例については以下をご覧ください。
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